ナニワ商人の知恵と習慣

商売人と言われる大阪人のDNAに宿る「ナニワ商人(あきんど)」の知恵と習慣

先手必勝(1-4)

商は笑なりという大阪的発想は既に述べたが、これを一歩進めて、商は勝なりについて考えていこうと思う。笑、商、勝、いずれもショウである。商いは笑いをもって相互に共感を持つことが出来るが、やはり商いは勝たなくてはいけない。とくに同業者に於いては、勝負をはっきりと決めなくては人生は曖昧なものになってしまう。

定年退職して年金生活を送ろうとする人たちにとっても、人生は勝負の時であると思う。人間、死ぬまで勝負なのだ。勝っている状態で死を迎えるのと、負けている状態で死を迎えるのとではかなり違う。ましてや生ける時に勝つと負けるとは大いなる差が生じてくる。では、勝つということと負けるということの差はどこがどう違うのかと考えてみよう。

大阪商人は、人生は商いに勝つことだといつも思っている。商は勝なりなのだ。この考え方を哀れと思ってもらっては困る。「大阪の商人はガメツイ儲けばかりを考えているけれども、金を持ってあの世に行けるものではないのに・・・」という言葉を耳にすることがある。たしかにそうである。が、こういうことを口ばしる人は、えてして、怠け者か、あるいは虚栄心の高い人が多い。

こういう言葉を口にする人こそ、金が欲しいという内面を宿しているものである。大阪人は、金銭の欲求があった時は、正直に欲しいというものである。欲しい時に欲しくないということこそ虚偽の申し立てをして、虚栄心のカタマリのように思われてしまう。勝つための方法については、古い言葉が現在にも通用する土地が大阪なのである。