ナニワ商人の知恵と習慣

商売人と言われる大阪人のDNAに宿る「ナニワ商人(あきんど)」の知恵と習慣

小判は利発なもの(1-5)

  • 商は笑なり。
  • 商は勝なり。

と書きすすんできた。商売というものは、商人本人も客も笑顔で接して、物の取引をして、結果としては、商人が勝つ(儲ける)というふうにもっていかなくてはいけないということである。商は笑にして勝なりというわけだ。が、商人の心得としては、先ず人材を見抜くことからはじまるというのが常識であった。人間と人材は違うということを肝に銘じてこそ商人の第一歩であるといわれた。

 現在の会社機構の中でも「人間」はゴマンといるが「人材」は滅多にいない。商人は家督(財産)の運用を引退した後に誰に任すかによって、築き上げた財産をさらに増やすという方法を考えるのが、商人の中の商人であり、これを任すのを誤ったなら、たちまちにして財を散じることになる。

 この目が経営者にあるかないかで家の命運は決するのである。馬鹿息子に財を譲ったために、あえなく潰れていくケースがなんと多いことか。「二代目」が家を潰すという諺が昔からあるのをみてもよくわかる。初代が財を成し、二代目が家督を引き継ぐが、すでに時代の流れが変っていて思うように運ばない。

そこで憂さばらしのために稽古事とか遊びをする。三代目は、この父親の遊び癖だけを身につけることになる。借金がかさんで倒産してしまう。この失敗は、家の財産は身内の繁栄だけに用いようとした心の狭さが災いしてのことである。