ナニワ商人の知恵と習慣

商売人と言われる大阪人のDNAに宿る「ナニワ商人(あきんど)」の知恵と習慣

小判は利発なもの(5-5)

アメリカの貧乏画家が鉛筆の底にケシゴムを付けたのに似ているし、保険勧誘員だったウォーターマンが先の割れないペン先を作ったのとよく似ている。

大きな資金を投入して損をする前に、金のいらない頭の回転で発明品を作り出し、それが売れるメドが立つと、どかんと大きな資金を投入して、他人に真似る時間を与えないようにするのである。

金の運用というのは、野球でいえば、バントとかスクイズで塁に出た走者を着実に送っておいて、ドカンと長打で得点するのと似ている。金を運用する場合、絶対にはじめから大儲けを狙った場合は、えてして失敗が多いといわれる。

これは今も昔も同じことである。金のかからない頭の回転を第一にして、それも小物に限って考え出せばいいということである。

だが、発明したものを大量に生産出来る資本と体制は常に準備しておかなくてはいけない。その資本も借入ではいけない。自己資本でなくてはいけないという一例である。

この丁稚は次第に儲けて、大金で霊岸島に養父母のための隠居所を造成して、孝養の手本になった。丁稚に「人材」の素質を見た主人が偉かったといえるが、金の運用では丁稚が上だった。