ナニワ商人の知恵と習慣

商売人と言われる大阪人のDNAに宿る「ナニワ商人(あきんど)」の知恵と習慣

先手必勝(4-4)

-辞卑クシテ備エヲ益ス者ハ進ムナリ。

これは、相手が下手に出てくるのは攻撃を狙っているのだから十分に警戒した方がいいということである。

-辞強クシテ進駆セントスル者ハ退クナリ。

これは、強がりばかりをロにして攻めるような様子を見せる敵は、逃げる準備をはじめたのだから、恐怖を覚えたりしない方がいいということである。

-半進半退スル者ハ誘ウナリ。

思わせぶりな動きを示す敵は、こちらを巧みに罠にかけようとしているのだから要慎(ようじん)した方がいいということである。

-四十歳までは勝つを信じて攻め、四十歳以降は負けまいとして攻め。

これは武田信玄の言葉である。四十歳までは、ただ一途に攻めていけ、ただし、四十歳を越えたあたりでは、人生に敗北しないように防備を十分にして攻めていかなくてはいけないということだ。平均寿命が伸びた現在でも、この四十歳説は変らないように思う。

人生をマラソン競走と仮定した場合に、四十歳というのは、折り返し点ということになる。折り返し点では、常に上位集団の一人でなくてはいけない。上位集団にいればこそ、折り返してから、周囲のランナーとの掛引が可能なわけであり、折り返し点で上位集団に入っていなかったなら、折り返しを過ぎたところで苛立ちを覚えたりして、自分のペースを狂わせ、計算も立たなくなり、遂には離脱してしまうことになる。

これは人生も仕事も同じことだろう。定年が近付いたからといって、慌ててバタバタしても仕方がない。かえって、精神的にも肉体的にも疲れ果ててしまうことになる。定年というのは、必ずやってくるものなのだから、会社にいる折り返し点から、定年後の自分の生き方をじっくりと時間をかけて考えておかなくてはいけない。定年六十歳として、四十一、二歳の男の厄年あたりが折り返し点といえそうだ。

最近、この年齢に単身赴任というケースが多くなってきたのは、きわめて危険だといわなくてはならない。単身赴任をこの年代でやったなら、仕事と生活の両面を同時に考えなくてはならないし、人生の未来展望まで考えが及ばないからである。時間は決して待ってくれないということを自分にいい聞かし、ひとつの信条を持って生きていくのが勝につながる唯一の道である。